海苔漁師の日常〜4月編〜
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今回は『海苔漁師の日常〜4月編〜』を紹介します。
元サラリーマンだった私は22年8月から宮城県七ヶ浜の海苔漁師として新たな人生を歩み始めました。
職種は全く異なるものですが転職して半年以上が経ち、徐々に海の男に近づいてきたように感じます。
海苔養殖は冬季が本格シーズンですが、8月から作業は始まっています。
8月〜3月までの作業内容は別記事で紹介しています。
まだ読んでない方は合わせてご覧ください。
今回は4月編になります!
22-23年の海苔養殖シーズンは今月で無事に終えることができました。
締め作業の内容を詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
4月で今漁期は終了
昨年8月から養殖を始めた海苔は4月を持って今漁期が終了となります。
西日本では赤潮・強風・暖冬などが影響し、不作のシーズンとなりました。
宮城県では暖冬の影響は多少あったものの、海苔の色合いも黒く、ここ数年では良い年となりました。
同じ海でも場所が変われば海苔の育ち方も異なるのが面白いですね。
4月上旬は最後の出荷作業
3月中旬以降に摘採した海苔は、4月上旬に出荷します。
漁業組合のスケジュールでは4月末の出荷が今漁期最後の予定ですが、
私のいる海苔屋は3月末で摘採を終了したため、今漁期最後の出荷は上旬となりました。
4月に入ると各海苔屋の出荷数は減ります。
理由は前の記事にも記載した通り、等級が落ちて価格も落ちるからです。
等級が落ちれば入札価格が安くなるため、薄利多売どころかとって採算が取れなくなることもあります。
(※等級は地域によって異なります。そのため他地域の海苔を等級だけで比較はできません。)
等級は市場に出てしまうと分かりません。
海苔シーズンに漁業市場に行くと、帯が巻かれた乾海苔が売られています。
帯には何等級か書かれているので気になる方は一度足を運んで見てはいかがでしょう。
海苔網の撤去
4月上旬の出荷準備をしつつ、海苔網の回収と筏の撤去を行います。
春になるにつれて海水温度は上昇し、モク(海藻類)が網に絡みやすくなります。
海苔網や筏は手作業で回収するためモクが付着するとかなり重くなります。
なるべく楽なうちに回収をしたいため、摘採が終わればすぐに回収を始めます。
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写真は3月末摘採時の網と、4月回収時の海苔網です。
両方ともモクがたくさん付いているのが見てわかると思います。
モクが付いた状態では陸に上がってから取り除くのが大変なため、
船上で回収時にある程度取ってしまいます。多く付きすぎる場合、筏1台(海苔網4枚)回収するのに1時間程度かかることもあります。
漁場の後片付け
海苔網の回収が終われば漁場に残っている、筏・錨・浮き玉を回収します。
海苔養殖に使用した漁場はオフシーズンの間は何も残さないとルールで決まっています。
筏(いかだ)は海苔網を固定する道具で、油圧の機械を使用し巻き取って片付けます。
巻き取る際にモクが多くついてる場合にはある程度除去します。
作業中は音がうるさいため手や足が挟まった場合には大声で叫ばないと、
怪我・事故につながってしまう危険な作業です。
筏を固定するために錨(いかり)を使用しています。
水面までは油圧モーターで引っ張りますが、船上への引き上げは手作業です。
1丁約25kgを海から引き上げるのは2人がかりでも重労働でした。
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海苔養殖に必要な道具を全て回収したら、漁場を区画整理していた目標の旗やブイも海苔屋が片付けます。
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すべて回収すれば海の上には何も残らない状態になります。
この状態になれば今漁期が終了です。お疲れ様でした!
陸での作業開始
4月に海苔出荷、漁場の後片付けが終われば海での作業は終了となりオフシーズンに入ります。
オフシーズンは何もやることが無い訳ではなく、来シーズンに向けた準備をします。
筏の整理
海から回収した筏にはモクが付いていたり、筏同士が絡まっていたりするので1つずつ整理していきます。
単純な作業ですが、丁寧に整理しておくと来シーズンの使用がスムーズです。
他の海苔屋も陸作業が始まると一番最初に行っていました。
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海苔網の発酵
海苔網は陸にあげてからすぐに綺麗にするのではなく、一度付着している海苔を発酵させ腐らせます。
理由は、網に付いた海苔は腐らせて乾燥させないと落ちないからです。
今シーズン使用した海苔網は来シーズンも使用します。
付いている海苔を腐らせて綺麗に洗い落とさないと来シーズン、海苔のタネ付きが悪くなってしまうのです。
海苔屋によって発酵方法は異なりますが、ビニールシートを被せたり、野晒しにしておくのが一般的です。
(※発酵した海苔網は異臭がすごいのであまり近づかないことをおすすめします。苦笑)
今漁期終了と来シーズンの準備開始
今回は『海苔漁師の日常〜4月編〜』を紹介しました。
摘採した海苔を全て出荷し、漁場にある道具を全て回収して今漁期は終了。
大きな不作もなく、むしろ近年では豊作で終わることができました。
海作業が終わる最終日は親方が船の塩と御神酒を撒き、海に感謝をしていました。
自然相手の一次産業。自分たちの力だけで海苔は作れないことを再認識しました。
オフシーズンに入りましたが、来シーズンに向けた準備はもう始まっています。
また良い海苔を作るために1つずつ丁寧に準備していこうと思います!
また次回の記事でお会いしましょう!それでは〜